メキシコ湾の石油漏出対策に関する17の疑問

投稿日: 3/25/2011


マイク・アダムス(ヘルスレンジャー)

By Mike Adams, the Health Ranger

メキシコ湾のBPの惨事についてはっきり言えるのは、主流のマスコミよりも、独立系ジャーナリストの方がはるかに鋭い取材をしていることだ。CNN、フォックスなども確かにこの問題に関心を向けており、いくらか堅実な報道もしてはいるが、例えば、なぜ米国政府はさもBPと結託しているかのよう に漏洩の実態を隠蔽するのか?といった真相に迫る取材ができていない。

先日、「メキシコ湾石油漏洩に関する16の熱い疑問」という記事をTheEconomicCollapseBlog.comで見つけた。実に優れた洞察である。この疑問の作成者は誰か不明なので紹介できなくて残念だが、検討の価値があると思ったので、以下に私のコメントと追加の疑問を加えて紹介する。

16の疑問

(1) バラク・オバマは、メキシコ湾岸沿いに17,000人以上のNationalGuard(州兵、国家警備隊)を配備し、州知事が「必要であれば」使用できるようにしている。だが、この州兵は、具体的に何をする予定なのか? 石油流 出を止める仕事をするのか、それとも民衆を統制する仕事なのか?



(マイク・アダムズの見解)良い質問だ。今回の対策活動を見ると、浄化作業というよりも、現場にメディアの取材を寄せ付けないようにしたり、人々の現実認識をコントロールすることが目的のようだ。

(2) バラク・オバマは、「メキシコ湾復旧大臣(Gulf recovery czar)」を任命すると発表した。メキシコ湾地域の復旧を監督する責任者だ。この「大臣」の任命が、この状況に責任を持つというオバマの考えなのか?

(3) 信じられないほど有毒なため、英国の海務局はコレキシット9500を完全に禁止している。つまり、仮に英国の北海で大きな石油流出が発生しても、BPはコレキシット9500を使うことができない。それと同じものを、メキシコ湾なら使用できるのは何故か?



(マイク・アダムズの見解)コレキシットは海洋動物を殺し、海の底に沈めて見えないようにできる。今でも相当な感情的な抗議があるのに、死骸が浜辺に流れ着くようなことがあれば、もっと激しくなる。

(4) 2.61ppmのCorexit9500(1:10の比率で石油と混合したもの)にさらされた魚の50%は96時間以内に死亡するとされる。ということは、1ガロンのCorexit9500・石油混合物は、383,141ガロンの海水を、魚にとって非常に有毒な海水にする能力がある。それで何故、BPはメキシコ湾に1,021,000ガロンのCorexit 9500とCorexit9527を投入できるのか? さらに追加で805,000ガロンを投入しようと注文しているが、何故それを止められないのか?



(マイク・アダムズの見解)悲しいことに、メキシコ湾を仕切っているのはBPであって政府ではない。米国政府は私企業の手先になってしまい、今やBPは自らがメキシコ湾の所有者の気になり、好きなようにしている。

(5) 魚にとって分散剤が信じがたいほど有毒ならば、農作物への影響はどうなのか? 人間への影響はどうなのか?



(マイク・アダムズの見解)ハリケーンが吹き上げた化学物質が陸地に降り注げば、メキシコ湾全域が汚染されるだろう。最悪の条件が重なれば、たとえばフロリダの柑橘類産業は全滅するかもしれない。

(6) メキシコ湾の浜辺の一部では鼻孔を焦がすような相当に強い臭気が出ているようだが、野生動物はどうなっているのか?

(7) メキシコ湾岸地域から大量の鳥の群れが北に向かっているのは不吉な徴候か?



(マイク・アダムズの見解)数年前にインド洋で津波があった。そのときには、動物が先に逃げ、何も知らない人間は逃げ遅れて殺人的な波に打ちのめされた。メキシコ湾でも、これに似たことが起こっているのだと思う。ハリケーン一つで、全域に毒性化学物質が拡散するだろう。〔訳註:ハリケーンのシーズン は6~11月で、集中時期は8~10月〕

(8) なぜBPは民間警備会社を雇い、浄化作業の現場に人々が近づけないようにしているのか?



(マイク・アダムズの見解)それが問題の核心である。ハリバートン社が中東で治安活動をしているのと同じで、メキシコ湾ではBPが治安に当たってい る。今や受託企業は現地の警察になっており、まるでメキシコ湾を所有しているかのようにふるまっている! これは企業が政府を乗っ取った証拠だ。

(9) なぜBPは、GoogleやYahooのような検索エンジンの検索結果を公然と操ろうとしているのか?

(10) なぜFAA(連邦航空局)は、メキシコ湾の漏洩現場の上空を閉鎖したのか? 米国民に見て欲しくないものとは何なのか?



(マイク・アダムズの見解)これにはいろいろな答がある。たぶん連邦政府は、人々が小型機に乗って航空写真を撮り、インターネットに掲載するのが嫌なのだろう(オバマ政権は事実の隠蔽活動で過労気味である。ちょうどブッシュ政権が中東の戦場から星条旗に包まれて帰還した棺桶を隠したのと似ている)。 深海で核を使用して油井を破壊するという狂った計画があるせいかもしれない。キノコ雲が現れて、飛行機が墜落してはまずいのだろう。

(11) ビル・ネルソン上院議員(フロリダ州)は、原油が漏洩している海底には、更に亀裂が発生しているとの報告があると言っている。そうした亀裂が相当数あるならば、一体どうやってBPは完全に漏洩を止めることができるというのか?



(マイク・アダムズの見解)実は、BPはこの漏洩が短期間で止まるとは思っていない。完全に事実歪曲モードに入っており、全貌が明らかになる前に株式を処分する時間稼ぎとして、真実を否定し、ごまかす言葉を考え続けている。

(12) 科学者は湾岸の海域に通常レベルの1万倍の濃度のメタンを検出しているが、これは何故か?



(マイク・アダムズの見解)BPが海底を破壊したため、地下に封じ込まれていた膨大なガス水和物(メタンを含む)が噴出している。

(13) メキシコ湾の数箇所のモニター設備にて3000ppmを超える濃度のベンゼン、1192ppmもの高濃度の硫化水素が検出されている。これは人間に極めて有害なレベルだが、どうして一般市民に警告されていないのか?

(14) 流出現場で働く作業員の多くが、「謎の病気」に苦しんで地元の病院を訪れているが、これは何故か?



(マイク・アダムズの見解)これはメキシコ湾岸バージョンの「湾岸戦争症候群」になるだろう。あるいは9/11で消防士が患ったアスベスト問題のようなものだ。メキシコ湾で使用中の化学物質の毒性副作用が頻発するだろうが、BPも連邦政府も化学薬品と病気の関係を何年も認めないことは十分に想定され る。

(15) 保護ブーム(オイルフェンス)の「70~80%」が石油を遮断するのに全く役立っていないならば、何百万ガロンの石油が浜辺に押し寄せるのを止めるものには何があるのか?



(マイク・アダムズの見解)もちろん、何もない。石油は浜に到達することになり、BPにも連邦政府にも止めることはできない。実際のところ、少し沖合で石油を吸い上げているはずの作業船を休止させて、浄化作業を妨害しているようにも見える。

(16) 深海からの石油の噴流により、あらゆる生物が酸欠になり、広大な「死の世界」が発生していると言われている。この石油流出が拡大を続けるならば、メキシコ湾の大部分は巨大な「死の世界」になるのだろうか?



(マイク・アダムズの見解)まさにそうなりそうだ。メキシコ湾は巨大な死の世界になり、これは「地球に対する人類の犯罪」の歴史に追加されることになるだろう。これについてはCounterThinkで漫画化した。(2452年、人類による自然への残虐行為博物館:The Museum of Human Atrocities)

私自身の疑問を一つ加える。

(17) どうして我々の政府は、漏洩の真実を隠蔽するBPと共謀しているのか?



ケーブル・ニュースのBPの記者会見を覚えているだろうか? 沿岸警備隊の代表(女性)は、BPの広報官のわきに立っていて、まるでBPの家来のようだった。これは正気の沙汰ではない! どちらかといえば、沿岸警備隊がBPにあれこれ指示すべきであって、その逆ではない。

それに沿岸警備隊は、どうして漏洩現場に取材レポーターが近づくのを「不法侵入」で逮捕すると脅して制限しているのだ? 公共の水域に不法侵入? メキシコ湾の所有者はBPではないし、我々には本当に発生していることをビデオ撮影するためにボートで乗り出す権利がある。だが、米国政府は今やBPに奉 仕しており、一般国民の自由を制限してBPのイメージを守ろうとしている。

いつものこと?

私は、今回の災害は、「対策」によって自由を抑圧する新たな9/11だと思っている。今回の惨事への対策という名目で、どんな自由剥奪政策が推進さ れることになるのか・・・じきに分かるだろう。それが全て発表され実施されれば、損失を被るのはBPだけではない。我々全員だ。

企業支配と政府の共謀



今回のBPの惨事で我々は、我々自身の政府が強力な企業支配と結託して真実を隠蔽し、本来の浄化作業を妨害して事態をさらに悪化させているのを目撃している。まるで連邦政府は、わざと事態を悪化させ、災害を拡大するように取り組んでいるようだ。だが、どうしてだ?

なぜ我々自身の政府が災害を拡大しようとしているのか? その答は、あなたの目の前にある。ニューヨークの9/11の跡地に行き、ツインタワーの崩壊以来、米国政府がさまざまな方法で権力を拡大してきたことを思い出してみよう。

「絶好の危機を決してムダにしない」が今日の「大きな政府」の座右の銘である。国民から権力を奪い取る最も簡単な方法は、小さな災害を大災害に変え、「政府の対策」として、災害がなければありえないような大規模で抑圧的な法律へと飛躍できる。

では、今回の災害に対応するという名目で、オバマ政権はどんな抑圧的法律を考えているのか?おそらく政府は全海域の支配、もしくは海産物の全面的な支配を考えているのだろう。あるいは、今後25年間、禁油(石油を違法化)し、別のエネルギー形態への移行を強制するのかもしれない(それも生態系にとっ ては悪くはないが、自由の剥奪という大きな代償をどう解釈すべきか)。

今のところ、無数の陰謀論が政府の真意を推測している。そのどれが真実かは分からないが、一つだけ非常に明確なことがある。政府はメキシコ湾の問題解決に関心がない。真実を隠蔽するため、写真を撮影しようとする大手メディアを脅し、現場上空の飛行機の通過を規制し、現場付近の船舶の航行を規制し、本 当に起きていることを国民に知らせないように日々嘘をついている。

それだけの事実があれば、思考力のある人ならば、疑問を抱くはずだ。もしも状況が本当に順調ならば、どうして嘘をつかなければならないのか?

米国政府は自国民に毒を盛る



政治的な目的を達成するために、米国政府が自国民に毒を盛るかもしれないと信じるに足る歴史的事実がある。禁酒法の時代、米国政府は、法律を無視して酒を飲む人に危害を加える(あるいは殺す)ために、実際に毒入りアルコールを販売した。

その話は、以下に掲載する。我々の政府が、国民の力を利用したいとき、どんなことをやりかねないか、学ぶことができるだろう。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo

原文の紹介・関連情報



原文 17 big questions about the handling of the Gulf of Mexico oil spill

原文 U.S. govt. poisoned its own citizens during Prohibition

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